知識編 | 更新日:2019年2月27日 掲載日:2019年2月27日 |
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Answer(要約)
背面開放座位(はいめんかいほうざい)とは、『できるだけ背面を支持しない空間をつくり、背筋を伸ばし脊柱の自然なS字カーブを損なわない姿勢で、ベッドの端に座り足底をきちんと設置した姿勢』(看護学事典 2011)のことで、「a.背中を開放にする」「b.頚部(首)をもたれさせずに自力保持する」「c.両足を下げ、足底を床に接地する」ことが重要とされています。
(大久保 2013)。
詳細解説
もともと背面開放座位は、川嶋みどり氏、紙屋克子氏の「大脳皮質の興奮に最も有利な姿勢である立位に近い座位」という考えに基づいています(川島ほか1991,紙屋ほか1992,川島ほか1993)。1980年後半から1990年前半にかけて、寝たきりの高齢者や意識障害者に提供され、表情の変化や発語の増加などが認められ、臨床で話題になった姿勢です(菊本ほか1994,安藤1998)。
背面開放座位の誕生のエピソードは、川嶋みどり氏の岩波新書「看護の力」(川嶋 2012)に掲載されています。
健康な人は、日常生活で何気なくとっている姿勢ですが、手足に障害や麻痺、体力や筋力が低い場合は、この姿勢を維持するのが難しい場合があります。
例えば、脳卒中で手足に麻痺を伴った場合や高齢により体力が低下した場合は、自力でこの姿勢を取るのが困難になり、背もたれのあるリクライニングチェアやベッド上ギャッヂアップした座位で楽に過ごしてしまい、ますます体力が低下したり、脳や体内臓器への刺激も低下し、脳活動や内臓活動の低下に繋がる廃用症候群を引き起こす原因にもなります。
ベッド上ギャッジアップ座位
リクライニングチェア
この廃用症候群を防ぐためにも、自力で背面開放座位を取りにくい場合は、背面開放座位保持具を使って、この姿勢を意識的に取るようにできます(背面開放座位保持具の説明は、「Q6:一人で座れないときはどうするの?」参照)。
1993年当時、背面開放座位は「できるだけ背面を支持しない空間をつくり、背筋を伸ばし脊柱の自然なS字カーブを損なわない姿勢で、ベッドの端に座り足底はきちんと接地した姿勢」(川島ほか1993)とされており、背面開放端座位や背面開放型ベッド上端座位とも呼ばれていました(龍ほか1992,川島ほか1993)。複数の臨床現場で、認知症高齢者や脳卒中患者を対象にこの姿勢が提供され、有効性の事例研究が報告されていましたが、2002年以降、「背面開放座位」と呼ばれることが多くなりました。これは日本看護科学学会看護学学術用語検討委員会で「背面開放座位」の用語が取り上げられるようになったこと(日本看護科学学会2005)、背面開放座位の有効性を生理学的観点から検証する研究が多くなったことが理由の一つと言えます(大久保ほか2007)。さらに2011年には看護学事典で「背面開放座位」が掲載されるようになり、看護界ではこの名称でほぼ統一されたと言えます(看護学事典2011)。
目次
【知識編】
- Q1 背面開放座位ってなに?
- Q2 どんな効果があるの?
- Q3 どんな人に実施するの?