Q2 どんな効果があるの?

知識編 更新日:2019年2月27日 掲載日:2019年2月27日

Answer(要約)

背面開放座位は、自律神経活動の検証から

  1. 背面の開放
  2. 頚部の自力保持
  3. 足を下げ、足底を床面に接地させること

が効果的要素として認められます。また、脳波、筋電図の観点から、意識レベルの改善や廃用症候群の予防において有効性が認められています。

詳細解説

背面開放座位の効果的要素は、自律神経活動の観点から比較検証した研究において明らかになっています。

  1. 健康な男女11名を対象に、仰臥位、ギャッチアップ座位、背面開放座位の3姿勢による自律神経活動を、心拍変動周波数解析(山本式自律神経機能検査CGSA法)を用いて比較検討した研究があります(大久保ほか1998,大久保2013)。その結果、ギャッチアップ座位よりも背面開放座位の方が、有意に交感神経活動が賦活化し、副交感神経活動が低下しました。また、仰臥位とギャッチアップ座位では交感神経および副交感神経活動において有意な変化は認められませんでした(図1)。

    図1 3姿勢の自律神経の変化
    (大久保暢子・菱沼典子(1998):背面開放座位が自律神経に及ぼす影響,臨床
    看護研究の進歩,10,p56,57より一部改編)
    (看護技術の科学と検証第2版 p172図4-1-2より転載)

    このことから、背面開放座位はギャッチアップ座位よりも身体に刺激を与える姿勢であることが示唆されました。加えて、臨床でよく目にするギャッチアップ座位は、仰臥位と変わらない刺激であることがわかりました。

  2. 背面開放座位のどの点が身体刺激として効果的であるのかを調べるために、仰臥位、両足を接地した背面密着座位、背面開放座位を比較した研究があります(大久保ほか2002,大久保2013)。この研究では、仰臥位よりも両足を接地した背面密着座位のほうが有意に交感神経活動を賦活化させ、副交感神経活動を低下させました。さらに両足を接地した背面密着座位よりも背面開放座位のほうが、有意に交感神経活動を賦活化させ、副交感神経活動を低下させました(図2)。

    ※この図は、仰臥位の交感・副交感神経活動値を1とし、両足を放置した背面開放
    座位、背面開放座位の交感・副交感神経活動値を1に対する割合で見ている。
    図2 仰臥位、両足を接地した背面密着座位、背面開放座位の自律神経活動の変化(大久保暢子・向後裕子・水沢亮子,他(2002):座位による背面開放が自律神経活動に及ぼす影響,日看会誌,11(1),p45より一部改変)
    (看護技術の科学と検証第2版 p173図4-1-4より転載)

    このことから、両足を接地していても背面を開放した姿勢にする方が身体に刺激を与えることがわかりました。

  3. 背面開放座位による効果的な要素として、頚部を自力保持することが含まれているのかを検証するため、頚部の自力保持が自律神経活動に及ぼす影響を検討する研究も行われました(Okubo etal.2005a,大久保2013)。この研究では、仰臥位や背面と頚部を密着させた座位よりも、背面を密着させ頚部を自力保持する座位のほうが交感神経活動を有意に賦活化し副交感神経活動を有意に低下させました(図3)。

    図3 仰臥位、背面と頚部を密着させた座位、背面を密着させ頚部を自力保持する座位の自律神経活動の変化(Okubo N etal(2005):Effect of aided and unaided support of the neck while sitting(with back support),on autonomic nervous system activities,Japan Journal of Nursing Science,2,p37より一部改変
    (看護技術の科学と検証第2版 p175図4-1-6より転載)

    この研究から、頚部を自力保持することが自律神経活動に変化をもたらし、身体の刺激につながることが示唆されました。

脳波の観点からは、脳の活動を示すα波、β波の変化の出現と意識レベルの改善を認めています。

脳出血およびくも膜下出血が原因で、3か月以上意識状態に変化がなく、遷延性意識障害となった患者に背面開放座位を実施し、脳波と東北療護センター遷延性意識障害度スコア(広南スコア)を用いて意識レベルの変化を観察した事例研究があります(Okubo 2011)。背面開放座位を導入する前の意識レベル(広南スコアと脳波)を2週間測定し、その後、背面開放座位を1日2回、各30分間提供し経時的変化を観察しました。
その結果、広南スコアの改善と背面開放座位導入前には認められなかったα波、β波の出現と増加も認められました。検討した3事例すべてに意識レベルの改善を認め、背面開放座位の有効性を示唆する結果が得られています。

筋電図の観点から、頚部や背部の筋活動への効果が認められています。

頚部の自力保持は自律神経活動だけでなく、筋肉自体にも効果をもたらしているのではないかといった検証もなされています(植田ほか2009, 岸部ほか2011)。首まで背もたれがあるリクライニング車椅子と背面開放座位において、左右の頚部僧帽筋と脊柱起立筋を表面筋電図で測定し、周波数FFT解析をおこなったところ、10例中8例がリクライニング車椅子よりも背面開放座位のほうが、筋活動が高くなったという結果が得られています。

目次

はじめに

【知識編】

【実践編】

引用文献

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